遺言書作成の4つの種類
遺言の作成方式は、大きく「普通方式」と「特別方式」の2つに分類できます。
世の中で一般的に言われている「遺言」は、「普通方式」のことと考えて問題はありませんので、「普通方式」の知識があれば十分かと思います。
遺言の4種類
「普通方式」は大きく3種類、自筆証書遺言を従来型と法務局保管型に分けた場合は4種類、があります。
- ① 自筆証書遺言(従来型)
- ② 自筆証書遺言(法務局保管型)
- ③ 公正証書遺言
- ④ 秘密証書遺言
①自筆証書遺言(従来型)
遺言者ご自身が遺言内容の全文と日付及び氏名を書き、書名の下に押印して作成する遺言です。
自筆証書遺言は、いつでもどこでも簡単に作成できます。
費用をかけずに、自分だけで作成したい人に向いています。
また、遺言を作ったことも内容も秘密にしておくこともできます。
しかし、遺言が有効となるためには、一定の要件を満たさなければなりません。
自筆証書遺言は自分自身で書きますので、遺言が有効となる要件をみたしていない遺言書を作成してしまい、せっかく書いた遺言が無効となってしまう危険性があります(例えば、日付が令和3年5月吉日になっているなど)。
また、誰にも知られることなく作成できますので、死後に発見されないということも考えられますし、入院や施設に入所している間に家族に遺言書を発見され、偽造・変造されてしまう、紛失してしまうという危険性もあります。
さらに、遺言書の内容を確認するには家庭裁判所で検認の手続きが必要となりますから、すぐに相続手続きに入ることができません。
②自筆証書遺言(法務局保管型)
自筆証書遺言(従来型)の欠点を形式的に補完する制度で、法務局が遺言書を保管するものです。
具体的には、遺言者の死亡後に遺言書の家庭裁判所への検認手続きが不要になります。
また、法務局に保管を申出する際に届出することにより、相続人等の1名に、法務局から遺言者の死亡確認後、遺言書保管の連絡が行くようにできます。
さらには、自筆証書遺言ではありますが、財産目録についてはパソコンやワープロによる作成がOKになっています。
保管申出時に法務局に支払う費用も3,900円と低廉で、当サイトとしてはお勧めする制度です。
ただ、法務局が遺言の要件を保証するわけではございませんので、あくまで自筆証書遺言としてのリスクは存在しますので、作成に際しては内容をよく検討する必要性は変わりません。
③公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言者が「公証人」の面前で遺言の内容を口頭で説明し、それに基づいて公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめ、作成する遺言です。
公正証書遺言は、もっとも安心で確実性の高い遺言の方式です。
平たく言えば、遺言書としては最強です。
公証役場で公証人が作成しますので、遺言の要件をみたさずに無効となる危険性がありません。
また、遺言書の内容を確認する場合も、家庭裁判所の検認の手続きが不要なため、すぐに相続手続きに入ることができます。
さらに遺言書を紛失しても、公証役場に問い合わせをすれば、謄本を交付してくれますし、公証役場に謄本がありますので、変造・偽造のおそれはありません。
しかし、公証及び証人の手数料がかかります。
④秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、内容を秘密にしたまま遺言の存在のみを証明してもらう遺言のことです。
秘密証書遺言は、あまり利用されていない方式です。
正直に申しますと、当サイトでもご依頼を受けたことがございません。
秘密証書遺言は、遺言の内容を遺言者以外に知られることなく作成できますし、代筆・ワープロによる作成も可能です。
しかし、自筆証書遺言よりは厳しくありませんが、同じように要件をみたさない遺言は無効になりますし、公証人と証人の手数料が必要になります。
また、遺言書の内容を確認する場合も家庭裁判所の検認の手続きが必要ですから、すぐに相続手続きに入ることができません。
遺言の種類ごとの作成方法等の比較表
自筆証書遺言 | 自筆証書遺言(法務局保管) | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
証人 | 不要 | 不要 | 2人必要 | 2人必要 |
印鑑 | 認印可 | 認印可 | 実印 | 認印可 |
保管 | 遺言者 | 法務局 | 公証役場 | 遺言者 |
検認 | 必要 | 不要 | 不要 | 必要 |
遺言の種類ごとのメリット・デメリット
自筆証書遺言 | 自筆証書遺言(法務局保管) | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
費用 | 3 | 4 | 1 | 2 |
手間 | 2 | 4 | 3 | 1 |
確実性 | 1 | 3 | 4 | 2 |
※ 費用については、検認手続や裁判所、法務局への手数料を総合的に勘案しました。
※ 手間は、公証役場と裁判所への検認が必要な秘密証書遺言をワーストとしました。